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うたたね♪日記

元・絵本カフェ詩多音オーナーのブログです。 現在は、絵本をつなぐ活動の  心 色~ココカラ~ メンバーとして活躍中!!!

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『MIMI』第38話・雲野詩子

MIMI   -ミミと美海と滝さんについて-


     第38話



・・・え?

一瞬、バランスを崩したので、

彼の汗に手が滑ってしまったのかと思ったのだけれど、

ちがったらしい。

意図的に彼が私の体をベッドの方に動かしたようだ。


ええ!?


大変驚いた。

この、青白い(もやしな)彼に私の体を動かす力があるなんて!
(もっと他に思う事があるはずなのに)

やっぱり男の人なんだなぁと感心してしまった。

いや、しかしさっきまで押しても引っ張っても動かなかったくせに、

そんな元気があるなら着替えくらい自分でして欲しいと、

滝氏を睨みつける。

同時に、彼の手が私の頬に触れる。


「わかってるよ」


そのかすれた声が聞こえた時には、

私の視界から天井が消えて彼しか見えなくなった。

彼の唇が自分の唇に重なった時に初めて、

今、何が起こっているのか理解した。

まずい。

けど、あらがえない。

想像よりもずっと柔らかい彼の唇に

心臓が暴走しはじめた。

いたずらするように鼻と鼻をこすり合わせて


「美海さん、美海、かわいいね」


!!!!!

っっっぐはぁぁぁーー!

恥ずかし過ぎて全身が熱くなる。

それでなくても熱のある滝氏が乗っかっていて熱いのに。

彼の熱が私の舌にからみつく。

体の奥から、全身情熱に満たされる。

彼の背中に手をまわす。

右手で、彼の背骨を撫でる。

答えるように口づけは深くなる。



長い長いキスの後に

彼は耳元で呟く。


「美海、好きだよ」


かすれているのに

溺れてしまいそうなほどに艶めいた声で。

そして彼は、私の頬に耳にキスをして、

首筋に唇を押し付けたまま、

力尽きた。



彼の全身から力が抜けた瞬間、胸が潰されるかと思った。

重たい。


「ええっ!」


思わず声が出た。

これは一体どういう事だ。

彼の背中をつねってみた(強めに)

反応がない。

・・・

どうやら夢の中に戻って行ったようだ。

いや、待てよ?「これは夢かな」と呟いたのを思い出した。

まさか、全部夢だと思っての所行だったのか?

ありうる。

通常の彼には決して無い言動だ。

だって「好きだよ」ってもう告白だし!

ていうかどんな夢見てるんだ。

脱がされる前で良かった・・・いやいや!

ちがうちがう!

凄いキスされたし、私も何喜んじゃってんだ・・・

あぁ、自分が恥ずかしい。

いやでも、仕方ないよ。

好きな人にあんなキスされたら嬉し・・・いやいやいや!

ああ、どうしよう明日からいつも通りに出来るかな?

滝氏の出方次第か・・・?

ていうか本当に夢の中の事だと思っているのか?

いやーっどうしよう。

今まで無かったからまさかこんな展開が来るとは・・・

二年近く何も無かったのに・・・

やっぱりちゃんと男の人なんだなぁ滝さん・・・

・・・・・

パニック状態で頭の中がまとまらない。



まずすべきは滝氏の下から抜け出す事だと、

後から考えると思うのだが、

その時はその出来事に動揺し過ぎて、

彼に押し潰されたままくだらない事を考えて、

しかも疲れてそのまま寝てしまった。



夜中にザーッと風で雨が窓に叩き付けられる音で目が覚めた。

起き上がろうとして滝氏に潰されている事を思い出す。

安定した寝息が聞こえる。

熱も落ち着いたようだ。


「滝さん、どいてください」


もちろん返事は無い。

彼が起きてしまうのを覚悟で体を力一杯押し上げ、

なんとか這い出ることができた。

すごく喉が渇いていたのでサイドテーブルのポカリを飲んだ。

3分の2くらい飲んで、

しまったこれは滝さんのポカリだったと、

慌ててキャップをしてもとに戻す。

んー・・・とか言いながら何度か咳をして彼は寝返りをうつ。

どきっとして慌てて部屋を出た。

落ち着こうと思ってお風呂に入ったら、逆に目が覚めてしまって、

結局その日は悶々として眠れない夜を過ごした。




次の日、普通に起きて来た滝氏は、スーツでも寝間着でもなく、

デニムのシャツにカーディガン、コーデュロイのボトムというなんとも

秋らしい私服姿だった。

私が起きて来る前にシャワーも浴びたようだった。


「おはよう美海さん、随分良くなったよ。おかげさまで、ありがとう。

 今日は病院に行って来るね。

 一応インフルエンザじゃないか確認して、明日からは出勤するよ」


本当に、本当に何も無かったように普通の顔で普通に話して

普通にお味噌汁を飲んで、出かけて行った。



やはり彼は夢の中の事だとおもっているのか。

もしかしたらそんな夢を見た事すら忘れているのか・・・

聞くに聞けず、結局私も何も無かったようにしておくことにした。

けれどどうしても悔しいので、

いつかどこかでこの借りは返してもらうぞ。

と、心の中で強く念じておいた





~つづく~


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