MIMI -ミミと美海と滝さんについて-
第33話
「 漣ちゃんはね咲ちゃんに育てられたのよ。
二人は5歳違うでしょ?私と漣ちゃんは2つだけど。
だから漣ちゃんが産まれた時にはもう
今の咲ちゃんが出来上がっていたのね。
言葉使いは特にしつこく教育されてたわ。
漣ちゃんって、男っぽい話し方全然しないでしょ?
人に対して、君、とか、おまえ、とか言ったの
聞いた事、無いでしょ。
必ず、『 あなた 』って言うの。
咲ちゃんがね、
女性には敬意を持って『 あなた 』と言うべきだわ。
と小学生の時に漣ちゃんに説教していてね、
それを聞いて漣ちゃんは
確かにな、女性に限らず全ての人に敬意を持つべきだ。
と思ったんだって。
それ以来、ずっと『 あなた 』なのよ。
私のことも、香穂って名前で呼ぶか、あなたって呼ぶかの
どちらかなんだけどね。
相談とかするじゃない?どうしたら良いと思う?
とかね。そしたら、
『 香穂、あなたはどうしたいの? 』
って漣ちゃんは言うの。
それが不思議でね。漣ちゃんにそう言われると、
素直に気持ちを出せるのよねー。
子どものときは周りから、男なのに気持ち悪いとか、
老人とか言われたりしてたの。
でも漣ちゃんって我が道を行くタイプじゃない?
我関せずでさ。聞こえてないのか、聞いてないのか。
何考えてるか分からない顔でしれっとしてたの。
んーそのせいかわかんないんだけどね、
男の人と話す時、『 君はどうしたいんだよ 』
とか言われると、なんか腹立つのよ。
うちのダンナも含めて 」
旦那さんに言われたようだ。ケンカでもしたのだろうか。
まぁ、私に愚痴ってるくらいなら大した事では無さそうだ。
「 漣ちゃんは男か女かぎりぎり男かなってかんじだけど、
そこだけは全ての男の人に見習ってほしいと思うの 」
ティーカップを握りしめて香穂さんは力説していた。
正直、私にはよくわからない。
父に『 おまえ 』と呼ばれ馴れているので、フツーだ。
滝氏の言葉使いは確かに優しくて女性的に感じる事が多い。
しかし普段男らしい人が突然
「 あなたはどうしたいの? 」
と言ったらきっと、気味が悪いと思うのだが・・・
もし父が「 美海、あなたはどうしたいの? 」といったら・・・
大丈夫?ちょっととりあえず病院行ってみる?になるだろうな。
・・・かといって、
普段から滝氏のように柔らかい話し方をすると、
男性としての魅力が足りなくなるんだろう。
愛実に言わせると
「 私タイプじゃ無ーい。何考えてるかわかんないしぃ。
翔は滝さん大好きなんだよねー。
多分男にモテるタイプだと思うなぁ。
ほら、本人は女の子にモテたいのになぜか、
男ばっかり寄って来て、
女の子には親友~とか言われちゃったりする人いるじゃん?
だいったいあんなかんじだよね! 」
うん、わかる。翔君と結婚した愛実が
滝氏はタイプじゃないのは、よくわかる。
でも愛実は知らないだろうけど滝氏はちゃんと女の子にもモテる。
愛実にもバレンタインのチョコの山を見せて上げたい。
そう言うと愛実は
「 ちがうちがう、おねーちゃんわかってないなぁ~。
バレンタインのチョコなんてね、滝さんの職場環境じゃぁ
たくさん貰って当たり前!
そんなの友チョコだよ。シャコージレイ。
本人はよく分かってるじゃん。
だから貰って困ってたんでしょー。
生徒からのはどんな気持ちが入ってるかわからないから
余計に怖いと思うなぁ。困るぅ~。
直接持って来たのは確実に断ってるよ。
って分かってるからみんなきっと滝さんがいない間に
デスクの上とかに置いていくんだよ。」
・・・むぅ・・・言い返す言葉が見つからない。。。
確かに、同僚とかだけでなく生徒も含めたら
逆に少ない方かもしれないとも思えて来た。
それにしても、男の人にモテるというのは納得だ。
翔君も父も魔法にでもかかったかのように、
滝氏に懐いたのには本当に驚いた。
・・・ただ翔君と父が結構似たタイプなので、
ああいうかんじの男の人に好かれるのかもしれない。
私個人としては彼の事が好きだけれど、
どこが好きかと聞かれたら、答えに困る。
でもどこが良いかと聞かれたら、即答で
「 放任主義でマイペース 」
そして彼のマイペースが
私には丁度良いペースなのだ。
~つづく~
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