忍者ブログ

うたたね♪日記

元・絵本カフェ詩多音オーナーのブログです。 現在は、絵本をつなぐ活動の  心 色~ココカラ~ メンバーとして活躍中!!!

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

『MIMI』第35話・雲野詩子

 MIMI   -ミミと美海と滝さんについて-
     第35話

病人の世話をするのは馴れている。

実家では誰かが風邪をひくと必ず、私が世話役と任命されていた。

愛実が寝込むと、父と好実さんが


「美海ちゃん(こういう時だけ<ちゃん>が付く)よろしく」


と言い、母が寝込むと父と愛実が

「お姉ちゃん、よろしく」 というように。

幼い頃、愛実と好実さんはよく体調を崩していた。

血筋なのか、体質が良く似ていて特に2月3月頃に

毎年決まり事の様に二人は順番に風邪をひいた。

もちろん父が腰を痛めた時や、

インフルエンザになった時も私が世話役を務めた。


昔から私は風邪をひきにくく、

風邪ひきさんの世話をしても移る事が無かった。

それも世話役になった理由の一つでもある。

さほど人より体力や筋力がある訳では無いが、

健康だけが取り柄です。

と自信を持って言える。くらい病気と無縁で生きてきた。


体温計がなった。



「38度。なかなかですね」

「そぉ?」

「・・・病院に行きましょう。私手伝いますから」

「・・・あ・・・そぉ?」



私を見ながら、何か考えようとしているのだが

熱に浮かされて上手く頭が働かないようだ。

何か思いは巡らせているようだが、

言葉にならなくて「そぉ?」と言っているんだろう。



「掛かり付けの病院はありますか?」

「んー・・・寝てたら、ダメかな?」

「動けませんか?」

「・・・」


時計の病身の音

が30回ほど鳴った後に


「うん」


と返事が返ってきた。一瞬寝たのかと思った。

遅っ!

と突っ込みたい所だが、相手が病人なのでグッとこらえた。


「わかりました」


仕方ない。とりあえず何か食べさせるか。

お粥。

今から作るとそれなりに時間がかかるから・・・

先に梅醤姜番茶でも飲ませて・・・

頭冷やすのに・・・

などと考えながらテキパキと彼の頭の下に

タオルで包んだ氷枕を入れ、

おでこの汗を拭いて冷えピタを貼った。


「滝さん、水飲めますか?お腹は大丈夫ですか?」


「・・・お腹?・・・飲めるけど」


「けど?」


「・・・トイレ行きたくなるよね」


「えっ?下痢ですか?」


「いや・・・」


ん?ん?・・・下痢ではない。けどトイレに行きたくなる。

いや、トイレに行きたくなるから、

水を飲みたくないと言っているのか?

トイレに行くために動くのも、嫌だ、と?

・・・子どもか!


「滝さん、(アホな事言ってないで)水を飲みましょう。

 コップ一杯で良いので」


「・・・うん」


コップ一杯と言っても100mlくらいの小さなコップである。

下から出る前に熱で汗になるだろう。


「ゆっくりで良いので飲んでて下さいね」


のそっと左の肘をついて上半身を少しだけ起こした彼に、

コップを渡して台所に戻った。

手早く梅醤姜番茶をいれて、

自力では何もしたくない状態の滝氏に飲ませた。

それからゆっくりとお粥にとりかかる。



~つづく~

拍手[0回]

PR

コメント

コメントを書く

お名前:
タイトル:
文字色:
メールアドレス:
URL:
コメント:
パスワード:   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字

カレンダー

04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31

リンク

カテゴリー

最新コメント

最新記事

最新トラックバック

プロフィール

HN:
sanae
性別:
女性
職業:
絵本カフェ 詩多音

バーコード

RSS

ブログ内検索

最古記事

アーカイブ

アクセス解析

カウンター

フリーエリア