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うたたね♪日記

元・絵本カフェ詩多音オーナーのブログです。 現在は、絵本をつなぐ活動の  心 色~ココカラ~ メンバーとして活躍中!!!

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『子どもと絵本の出会いを作る〜読み聞かせのすすめ〜』参加募集

『子どもと絵本の出会いを作る〜読み聞かせのすすめ〜』

いよいよ、月曜日からです。
まだ、申し込み間に合います。興味のある方は是非参加下さい。

開催日:10/12(祝・月)11/22(日)12/23(祝・水)
参加費:900円(全3回分・子ども無料)
会 場:コンパルホール408会議室
時 間:10時受付
    10時半~12時まで
募集人数:20名(子どもは人数に含みません)

1回目、大分こどものとも社 所長 石川真也さんによる講演会を開催いたします。
2回目、伊藤房江さんによる、わらべうたベビーマッサージ
3回目、せとちゃんの「みんなで楽しむ絵本時間♪」
【お問合せ・お申込み】
絵本をつなぐ 心 色 ~ココカラ~

mail:cocokara.book@gmail.com
TEL:08064528883(岡部)

皆様のご参加お待ちしています。

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『MIMI』第13話・雲野詩子 ②


 MIMI  -ミミと美海と滝さんについて-




    第13話 ②


初めてこの滝邸に訪ねて来たのもこんな気持ちの良い春の日だったわ」


「そうでしたか?」


「ふふふ、もう漣太朗さんは覚えていないでしょうね。まだ小学生でしたもの。


 風の無い快晴、花の見頃の穏やかな日でした。


 新緑の楓と淡い薄紅色の桜に迎えられて、


 とても幸せな気持ちになったのを覚えています」


そうか、かおるさんは滝氏が小学生の頃からずっと家政婦として彼の面倒を見て来たのか。


きっと滝氏について知らない事の方が少ないんだろう。


「澄子さんはあの頃おいくつでしたか?」


滝氏がかおるさんに尋ねる。誰だろう、と首を傾げると


「澄子さんはかおるさんのお嬢さん」


と滝氏は私に補足をしてくれた。


なるほどと思いながら目線をかおるさんに戻す。


「あらいくつだったかしら。漣太朗さんは確か8歳・・・澄子は15だったかしらね」


「そのくらいですね。いつもセーラー服を着ていた様に思います。


 姉と妹と三人で良く勉強を見てもらったり、とてもお世話になりました」


??


かおるさんはお子さんがいらっしゃるので通いだったのかと思っていたのだが、


お子さんと一緒に住み込んでいたのだろうか?


それとも親子で通って来ていたのだろうか?


・・・聞いていいかわからない事だ。


それを聞くと自然と旦那様の話に繋がってしまう。


今日さっき会ったばかりの自分が問うていいものか・・・


気にはなったが聞かないでおく事にした。


そんな私にかおるさんはふわりと笑った。


「親子二人で住み込ませてもらっていたのよ、この滝邸に。


 澄子が十の時に夫が事故で亡くなってね、


 まだ女性が働くのに、安定した収入の得られる仕事に就くには、


 間口の狭い時代だったから、なかなか安定して雇ってくれる所が見つからなくて、


 その日暮らしみたいな生活が続いてね。


 そんな時に親子で住み込みでどうだろう。と声をかけて下さったのが、


 漣太朗さんのご両親だったのよ。


 心から救われたわ。


 門を入ると、この桜と楓がきらきらと輝いて見えて、


 まるで私たちの訪れを祝福してくれているようだった。


 滝家の方々が五人並んで笑顔で出迎えてくれて。


 あの日の事を私は一生忘れませんよ」


かるさん親子が滝邸に来るまでにそんなドラマチックな物語があったなんて・・・


と驚いたのは私だけでは無かった。


私以上に、滝氏は驚いた表情をしていた。


「知りませんでした。僕たちは母からそう言った事は聞かされていなかった。


 二人が来る前、母は僕たち三人に、


 『私一人では仕事をしながら家事をこなし子育てをするのは大変だから、


  二人に助けてもらう必要があるのだ』 と、だから


 決して二人に失礼の無いようにと話をしました」


「そうだったの。ふふ、奥様らしいわね。


 旦那様はお仕事で出掛けられて帰れない事が多かったから・・・


 奥様はお若いのに本当に器の広い優しい方でした」


「・・・かおるさんと母は同じくらいの歳では?」


「あら。奥様に失礼ですよ漣太朗さん。私の方が五つも年上です。


 まぁ、中身は反対でしたけど。いつも助けられてばかりでした」


すごい。私、今、滝家の家族の歴史を聞いている。なんとなく、うれしい。


なんて油断をしているとかおるさんから質問が飛んで来た。


不意打ちだ。


「そう言えば美海さんはどういう経緯で漣太朗さんの家政婦に?」


んん・・・そんなドラマチックな話は何も無いのですが、


たまたまが重なっていつの間にか一年が経とうとしています。


なんて曖昧模糊と中身の無い話は失礼なので、(本当だけど)


簡単に話す事にした。


「海に、」


「え?海?」


聞き返したのは滝氏だった。

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『MIMI』第13話・雲野詩子 ①

 MIMI  -ミミと美海と滝さんについて-




    第13話 ①



「お待たせしました」


そう言いながらテーブルの上にグラタンを置く。


「まぁまぁ美海さんありがとう、お先にいただいてます。


 まぁ!私グラタンが大好物なのよ。嬉しいわ!」


はい!その一言の為にがんばって作りました!


「美海さんもこちらへどうぞ」


滝氏が椅子を引いてくれた。


遠慮なく座ると、かおるさんがお酒をつけてくれる。


「ささ、美海さんもどうぞ」


一升瓶から湯呑みに、なみなみと。


お猪口も冷酒グラスも棚にあったはずだが、


この人達はなぜ湯呑み(大きめ)を選択したのだろうか。


「ありがとうございます」


「かおるさんつぎ過ぎですよ。美海さんはかおるさんのようにお茶感覚でお酒を飲めません」


「まぁ、お酒をお茶だと思った事なんて一度もありませんよ。お酒の方が好きです」


そう言ってかおるさんはニヤッと笑った。


つられて滝氏も笑う。


「知ってますよ」


二人の会話はとても穏やかで、それでいてテンポが良く軽やかで、楽しげである。


私は特に話す事も無いので二人の話をラジオでも聴くようにぼんやりと聴いていた。


親子ほど年の離れた二人が、こんなにも気の合う昔なじみのように親しくしているのを、


なんだかうらやましく思った。



いつの間にか私の足元にミミが丸まっていた。


「あれ?ミミいつの間に来てたの?」


小さな声で言ったつもりだったが、かおるさんには聞こえていたらしい。


ミミの姿を見つけるとニコッと笑う。


「あら、そのネコがミミ?」


「あ、はいそうです」


「ふふふ、漣太朗さんのライバルね」


「え?あの・・・」


「かおるさん。おつぎしますよ」


滝氏が割って入って来てかおるさんにお酌をしたため、


彼女の言葉の意味を聞く機会を逃してしまった。


「今日は本当に良い日ね。


 天気も良し、花も良し、漣太朗さんにお酌をしてもらって、


 こんなに可愛らしい若いお嬢さんにもお会いできて。


 何より、お料理が美味しいとお酒も美味しいわ」


ほろ酔い加減になってきたかおるさんは上機嫌だった。


ミミが滝氏のライバルとは一体・・・


猫と競うと言ったら・・・毛並み?それじゃぁ比べる前にミミの圧勝か。


いやいや、まぁなんといっても二人の間にある、


歴史というか深い絆のようなものをビシバシ感じているのだ、


二人にはわかり私にはわからないことがたくさんあって当然だと思う。


ついでもらったお酒をちびちび飲みながら、


時々へーとかほーとか二人の会話に相づちを入れたりしながら、


庭の桜の木を眺める。


蕾の残る八分咲きの丁度良い花見頃。


花見日和の快晴だ。


風はほとんど無いのであまり枝は揺れない。


桜の木の後ろに芽を出したばかりの楓の新緑。


枯れ葉の残る地面の中からもやはり新芽が顔を出している。


花からか、緑なのか、土からなのか、


柔らかい風がふわりと陽気を踊らせる。


ゆっくり空気を吸い込むと、春の匂い。


きれいだなぁ


一人心の中で呟く。


「本当に、綺麗よね。私、この庭がとても好きだわ」


まるで私の心の呟きに相づちを打つようなかおるさんのセリフに、ドキッとする。


かおるさん、私の心の声が実は聞こえるのではないかと、


どぎまぎしながらかおるさんを見つめてみた。


かおるさんはこちらには向かず、にこにこしながら桜の花を見ていた。

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『MIMI』第12話・雲野詩子 ②


MIMI   -ミミと美海と滝さんについて-

 第12話 ②




滝氏が軽くかおるさんと私の紹介をすると、
彼女は私に丁寧に頭を下げた。

「白川かおるでございます。本日はお招き下さって・・・」


「いえいえ、そんなこちらこそ今日は遠い所を・・・」

なんていう社交辞令な挨拶のやり取りを滝氏は早々と打ち切って、


かおるさんをソファーに座らせた。

「二人ともそんなに気を使わなくて良いよ。さ、かおるさんはここに座って。


 美海さんお茶をお願いね」

「いえ、そんな、何かお手伝い致しますわ」

「いいえ、今日は全部美海さんにお願いしています。


 かおるさんは今日はお客様ですから座っていてくださいね」

「あら、そう?それなら漣太朗さんの言葉に甘えましょうね。


 ああ、美海さんお茶まで出してくださってありがとう。


 それにしても、とってもすてきなお部屋になったわね!


 まさか、漣太朗さんあなたが?」

「ええ、そのまさかです。・・・と言いたい所ですが、美海さんの仕事です。」


おおっと、一瞬私の手柄を横取りする気かと思った。

「そうよね。漣太朗さんのはず無いわね。去年来た時と同じ部屋には思え無い。


 お洒落でいて嫌味がなくて・・・とても優しい。」

まぁぁぁぁぁ!かおるさんが私を褒めてくれたぁ!嬉しい!

「うん、インテリアの事はよく判らないけどすごく居心地が良いよ」


「あら、漣太朗さんはよく判らないのではなくて興味が無いのでしょう。」

「ははっそうかな?」

「まぁ、このお部屋に居心地が良いと思えただけ漣太朗さんにしては上出来ね」

かおるさんはハキハキとしっかり話す。


70過ぎの老婦人とはとても思えない若々しい方だ。


私よりも少し背が高く、骨格のしっかりした健康そうな体軀にショートカット。


真珠のピアス、品の良いベージュのワンピースに、


若草色の春物のノーカラーのジャケットをさらりと羽織っている。


良い意味で私の予想は裏切られた。


なんて素敵な女性だろう。と一目見て思った。


もちろん、目尻や首のシワやシミ、口元のホウレイ線もしっかりあるし、


髪の根元に白髪ものぞいている。


彼女が70年以上の歳月を重ねて来た証はしっかりと刻まれているのだが、


背筋をまっすぐに安定感のある歩き方をする姿は、本当に美しい女性だという印象を受けた。


私のイメージしていたかおるさんは小柄で和服の似合うような、


かわいらしいおばぁちゃんだったので(滝氏も以前かわいいと言っていたと思う。)


イメージとのギャップにかなり驚いた。


けれどイメージのかおるさんよりも本物のかおるさんの方がずっと好きだ。


なんて事を思いながら、何も聞いてませんと素知らぬ顔で料理の続きをしていると

「僕はなにをしたらいいの?」

と言いながら滝氏が寄って来た。


何もありません。と冷たく追い払う訳にもいかないので、


木製の鍋敷きを彼に渡した。


「では、これをテラスのテーブルに。テーブルは用意しています、料理にかけているラップや、


 食器にかけてる布を外していただけると・・・


 あとは昨日滝さんの買って帰った日本酒を、あ、冷蔵庫に冷やしてます。


 持って行って、かおるさんにテラスの方に移動してもらってください。」


「わかった。コレは何に使うの?」

なんと言う事でしょう!どうやら渡された木の板が何かわかっていないらしい。

今焼いているグラタンが焼き上がったら皿ごとその上に乗せます。


 なので空いてる所に置いてください。


 あ、お酒を注ぐの何か冷酒グラスとかもおねがいします」

「うん。他には?」

「・・・えーあと五分ほどで焼き上がるのでこれを持って私も席に着きますから、


 二人で先に始めていてください・・・滝さん。五分くらい待つのにって顔をされてますが、


 かおるさんをお待たせしない事の方が大事だと思います。


 気を遣って始めておいてくれませんか?」

「そうだね、わかった。始めておくね」

笑顔で返事をするとかおるさんと共にテラスの方へ出て行った。

「まぁこんなに。どれもおいしそうね私の好きなものばかり!」


「美海さんの料理は美味しいですよ」


鍋を洗いながら、テラスの方から聞こえてくる二人の会話を聞いて、思わず顔がゆるむ。


ボウルを濯いでいるとオーブンが鳴った。


グラタンの完成だ。


鍋掴みを手にはめてオーブンを開けるとチーズを焦がした香ばしい匂いが食欲をそそる。


焼きたてのグラタンを手にいざ、テラスへ。


~つづく~

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『MIMI』第12話・雲野詩子 ①

MIMI   -ミミと美海と滝さんについて-

 第12話 ①




私が料理を拵えるので、


プーさんに乗ってかおるさんを迎えに行くのは滝氏の役目になった


車で約一時間弱、山の方に走ると、


滝邸の元家政婦、白川かおるさんの住む家がある。



かおるさんの娘さん夫婦とその娘(かおるさんから見てお孫さん)と同居し、


日々孫娘の世話をしているのだが、


今日は日曜日なので孫娘は仕事が休みの両親に返して、一日の自由を手に入れた。


そして約一年振りに滝邸に遊びに来るのだ。


もちろん私は今日初めてかおるさんに会う。


滝氏からの話と、彼に届くかおるさんからの手紙の入ったかわいい封筒。


それから封筒に書かれたすっきりした美しい字。


以上が今私の知っているかおるさんの全てだ。


だけれど私はかおるさんの事が好きだ。


勝手にすてきな女性だろうと想像している。


だからきっと好きだ。




一週間ほど前、庭の桜の木に花が咲き始めた。


一週間もすれば見頃になりますね。なんて話していると

「毎年、かおるさんと二人でこの庭の桜の花の花見をしていてね、


 今年は三人でできるといいなって思っているんだけど、どうかな?

と滝氏は言った。


そんな訳で今日は、滝邸にてかおるさんを招いての花見になったのだ。


かおるさんが滝邸の家政婦をやめてからも、


毎年かおるさんが御重に料理を詰めて滝氏がかおるさんを迎えに行き、


二階のテラスで花見をするのが恒例の行事だったそうだ。



お、そうすると私、かおるさんに会えるな。


と思い心が踊ったたが、私の顔は感情に正直な方では無いので、


少し両の眉が上がったくらいの変化を見せて

「ご一緒しても良いですか?」

と聞いた。


「かおるさんも会いたいと言っていたから、美海さんも良ければ是非」

うーん、ウソでも嬉しい。

と思い、心を込めて食事を用意する。
と彼に伝えると、


かおるさんに手ぶらで来てもらえる。と言って喜んでくれた。

正午を少し過ぎたくらいにかおるさんと滝氏が到着した。


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