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うたたね♪日記

元・絵本カフェ詩多音オーナーのブログです。 現在は、絵本をつなぐ活動の  心 色~ココカラ~ メンバーとして活躍中!!!

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『MIMI』第23話・雲野詩子

MIMI  -ミミと美海と滝さんについて-

                      第23話



そんなことで、滝氏と共に母のお墓参りへ行く事になった。

滝邸から車で片道4時間。

早朝に出発しなければ、日帰りでは大変慌ただしい。

交代で運転しても往復8時間。高速なら片道3時間弱。


・ ・ ・ ハードだ。       


かなり疲れる。

他の交通手段も考えたが飛行機は直行便が無い上、

空港までが片道1時間半。


・・・うーん。


と言う事で電車を調べたが、これは乗り継ぎが多く、

最終的に母のお墓のあるお寺までは線路が通っていない地域のため

一時間一本のバスか、レンタカー。

去年は一泊二日で行ったのでこれで良かったが、

日帰りは・・・やはりつらい。

となると、最初からプーさんに乗って高速を走るのが、

一番時間もコストもかからない。  と言う結論に至った。

もちろん、プーさんにはETCが付いている。

滝氏は日曜祝日以外に、基本的に休みが無いので日帰りが良いだろう。

と思っていたので、そういう方向で相談した所、


「僕が早退して、夕方からプーさんに乗って出て向こうで一泊。

 次の日、お墓参りとご挨拶をして帰る方が、無理が無いよね」


と、ひょろっと細長くて白い滝氏。


「そうですね。そうしましょう」


お互い体力にあまり自信が無いので『無理が無い』にこした事はない。

一泊二日の小旅行が決まった。

インターネットで宿を調べると、お墓のあるお寺の近くに、

天然温泉の旅館・駐車場有り。

が近くにあって思わず食いついたが、まぁそこそこ値が張る上、

シングルが無く断念。

目的は、お墓参りですから。と自分に言い聞かせた。

最寄りのビジネスホテルを2部屋予約した。




前日の夜、荷造りをしている滝氏がスーツ用のバッグに、

スーツを入れようとしているのを発見。思わず止めた。


「スーツはちょっと・・・もう少しカジュアルになりませんか?」


私はほぼ普段着で行くつもりで、ジャケットすら念頭になかった。

今まで正装して行った覚えも無い。

父もいつもデニムにチェックの(20年くらい前に買ったような)シャツ

だったし、真夏にはアロハシャツにホワイトデニムなんていう、

浮かれまくった格好の時だってあった記憶がある。


「ジーンズにシャツとかで全然構いません」

「それは失礼じゃないかな?僕は初対面だから」


えぇ?!そうなのかな?いや、でもスーツは・・・

ネクタイまで用意してるし・・・家庭訪問か!と突っ込みをいれるべきか?


「いや、いやいやでも、スーツは・・・私スーツ持ってませんし」


並んだ時の二人のギャップが、いや、父も並んで三人の格好のギャップが・・・

私が個人的に気になっていたたまれないだろう。


「できれば軽めの格好が・・・私、普通のワンピースにカーディガンですし」

「そう?じゃぁ、チノにデニムのテーラードだったら良さそう?」


と言いながらそのベージュのチノパンとライトブルーのデニムジャケットを見せてくれた。


「助かります」


ジャケットは外せないらしい。

仕方ないので私も一応キレイめのジャケットを荷物に足した。



一晩家を空けるので、家は鍵をかけておくにしても、

今やペットと化しているミミが心配だったので(主に餌が)

妹夫婦、時枝夫妻に一泊してもらう事にした。

丁度、土曜日なので翔君はお休み。

愛実は先週から産休に入っているのだ。

食事は私が用意して温めるだけにしておく。

と言う条件で、承諾してくれた。


「えっ!お姉ちゃんとうとう初顔合わせ?結婚報告?」


ニヤニヤと楽しげな愛実。

母の事もお墓参りの事も二人には話していない。

ただ、父が一度会いたいと言っているから、滝氏に出向いてもらうのだと話した。

事実、意を決して父に電話し、前職を辞めた事、

今は滝邸で働いている事を伝えると、


「一度会いに行って良いか」


と問われ、滝氏に相談したところ、


「出向いていただくのは失礼じゃないかな。

 先に僕からご挨拶に伺うよ。

 その後でご招待して住環境を見ていただこう。ね?

 こないだ美海さんとも一緒に行くって、約束したしね」


さすが滝さん!と心の中で叫んだ。

きっと彼は生徒や同僚だけでなく、保護者各位からも人気があるだろうと、

再びバレンタインのチョコの山を思い出しながら思った。




そんなこんなで出発前日は、時枝夫妻のために食事のメニューを考え、

下ごしらえをし、二人の泊まる部屋を用意して、

滝氏を学校へ迎えに行く時間や用意するものなどを打ち合わせ。

それから、自分の荷物の用意をして・・・と用意ばかりで一日が終わった。


つづく。。。

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【おはなし(絵本)カフェ詩多音 ママの会】
 4/10(日)参加募集中です。


 はじめましての方も大歓迎です(^_-)-☆
 広いお部屋で、ママ&プレママ&ちびっこと、のびのびと楽しい時間を過ごしませんか?
 開催日:4月10日(日)
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 時間:10時~13時半
 参加費:1500円
 (お弁当・ドリンク込付)
 ※参加費は大人のみです。
 子どもさんのドリンク&食事等はご持参下さい。
 お申し込み・お問合せ
 080-6452-8883(岡部)
 utatane1026@gmail.com
 締め切りは7日(木)です。
 キャンセルは12日am10時までにご連絡をお願いします。(お弁当の予約がある為)

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『MIMI』第22話・雲野詩子

MIMI  -ミミと美海と滝さんについて-





     第22話



 猫一匹分の隙間を空けて隣に座る彼は、



いつも通り、クセの無いフォーマルな笑顔を私に向けている。



ふと、気が抜けた。



少し軽くなった心が自分を俯瞰で見る。





「滝さんがそうやって優しいから、泣いてしまったんです。



 多分・・・嬉しかったんです。



 滝さんの優しさに甘えてしまったんです。



 ・・・去年のお墓参りには、一人で行きました。」





「夏の連休の時かな?」





「あ、はい。良く覚えてますね。そうです」





「・・・美海さんほかに泊まりで出かけた事ないから」





「そっか、そうですね。母のお墓は母の実家近くにあって、



 ここからだと、日帰りは結構ハードなスケジュールになるので。



 駅の近くのホテルに一泊したんです。」





「ホテルに?」





「はい。父にも、祖父母にも連絡せずに行ったので。



 でも、一人でお墓に行くのを祖父に見られていたらしくて、



 祖父から父に連絡が入って、次の日に父から私に・・・



 その時に、来年は一緒にって約束して、



 そして今朝着信が入ってたんです。



 今ここに居るのは、逃げと言うよりも成り行き、



 と言う方が近いんですけど・・・父からしてみれば



 『見知らぬ男の人の家に住み込んでまで家に帰りたく無いのか』



 と言う事になるだろうと思うんです。



 そして、私はそれを否定はできません。



 父はきっと私を手放したく無くて再婚したんです。



 それが却って今は私が離れて行く原因になってると思って、



 きっと傷つきます。



 だけど父を傷付けたい訳では無いし・・・



 何をどう伝えれば良いのか考えるほど、わからなくなって」





テーブルの下からそっと、ミミが出て来て私と滝氏に間に飛び乗った。



ミャーと甘た声を出して、私の太腿に耳の付け根あたりをゴリゴリ擦り寄せる。



首の辺りを指で掻いてやると喉をゴロゴロならした。



思わず、ふっ、と笑ってしまった。





「不思議ですね、滝さんにこんな話」





「そう?自然な事だと思うよ」





「はぁ・・・そう、ですね」





そういわれるとそんな気がして来た。



「もし、僕が美海さんのお父さんだったら、



 傷ついても良いから美海さんに会いたいと思う。



 顔を見れば分かるでしょう?今元気にしているかどうか。



 電話よりメールより、手紙も良いけどそれよりも、



 目の前に居る事って、話すよりもっと多くの事を語り会える気がするよ。



 ・・・もし、ここに居る事を反対されて心苦しいのであれば、



 ここの事は気にせずに、あー辞めてもいい?・・・からね」





辞めてもいい?・・・ハテナがついてるぞ!





「僕は少し?とてもすごく大変、さ・・・困るけど」(さ?)





私では無く、ミミの方を向いて言う。





「気にしないで?」





珍しく、滝氏がたどたどしい。



『やめてもいい』なんて本心ではかけらも思ってないのが、



おもしろいくらいよくわかる。



そしてその事がとても嬉しい自分が居る。



百聞は一見に如かず、か。



滝氏の言っている事が目の前で、本人によって実証されているようだ。



そうか、滝氏が心外なウソを付く時はこんな感じなのか。



分かりやすい。



嬉しくて、自然と笑顔がこぼれる。





「ふふふ、辞めません。安心してください。食事とおやつには困らせません」





彼の目がミミから私に戻って来た。





「でも、反対された時には一度父に会っていただけると、



 翔君や日向もそうだったように、



 滝さんに会えば大丈夫そうだと思ってくれる気がします。



 なぜかはわかりませんが」





「うん、一緒に会いに行くよ」





滝氏は、やさしくて真っ直ぐな眼でそう言った。



なんだか、心強くなったような気がした。





「ふふ・・・滝さん、ありがとうございます。



 落ち着きました。父にちゃんと話してみます」





「うん」





残りの、ぬるくなった3分の1のアップルジュースを飲み干した。



リンゴの香りが口に広がる。



時計を見ると12時を回っていた。



こんな時間になってしまってすみませんと謝ると





「有意義な時間だったよ」





と言ってたちあがる。ご飯お願いね。と言って彼はお風呂に行った。



そうだ。帰って来てから彼はアップルジュースしか口にしていない。



急いで台所へ戻り夕食を温め始めた。







お風呂上がりの滝氏から、ミントの香りが漂う。



いつもの事だけれど、



今日は泣いた後のぐずぐずの鼻がミントのおかげで、すっとした。



同時に、心も体もすっと軽くなった気がした。





つづく。。。

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『MIMI』第21話・雲野詩子

MIMI  -ミミと美海と滝さんについて-


     第21話


「それで、父に話してなくて、もう二年近く父に会っていないんです。

 実家にも随分帰ってなくて・・・」


「ごめんね、気が利かなくて僕が休みを・・・」


「いや、違うんです。帰りたく無くて、帰らなかったんです。

 滝さんが、悪いんじゃなくて」


しまった。仕事の事を話すと直接滝氏の話にもなってしまう。

彼に誤解の無いように話さなくては。


「父は、話せば分かってくれる人です。

 でもわかってくれるからこそ、傷つけてしまうのが分かるから。

 何て言っていいか・・・

 一年前ここに来てすぐの頃、日向や翔君はすごく反対したんです」


「そうだよね、ごめんね」


滝氏が困っている。だーからちがうのに。困った。


「いやっでも、二人とも滝さんに会った後は打って変わって大賛成で。

 謝らないで下さい。私の事で、滝さんは何も悪く無い。

 父に話しにくい一番の理由はそこではなくて、

 反対するだろうからとかでは無くて。

 まず、前の仕事をやめた理由が言い辛くて。

 適当な事を言ってごまかしたりできないし、

 そうしてみてもきっと父は見抜いてしまう。

 前の仕事は、簡単に言うと人間関係でつまずいて、

 めんどくさくなって辞めました。

 あーなんか、苛めっ・・・ていうより、罠にはまったかんじで。

 店長が商品管理の女の子と不倫していて」


「?・・・うん」


「で、その女の子がなぜか、私と店長が不倫しているって噂を流して」


「あぁ。(納得)」


「周りが、ざわざわしてきて。そんな時に良い仕事任されたり評価されると

 余計に波風が立ちまして。面倒になりました。

 次の仕事も決まって無くて、貯蓄もそんなにある訳じゃなくて。

 仕事は気に入ってたんですが、すごく疲れてしまって。

 いろんな事が面倒になって。

 でも一人暮らしを続けるためには次の仕事をなんとかしなくちゃいけなくて、

 だけど仕事探さないととか考えるのも面倒で。

 でもどうしても家には帰りたく無かった」


ちょっと待って、一回落ち着こうワタシ。

だんだん卑屈になって来た。

また、一口グラスに口をつける。

滝氏は黙ってそれを見つめた。


「愛実と私、似てないって良く言われます」


「・・・そうだね」


「私、母にそっくりなんです。じゃぁ、愛実は父に似ているのかと言うと、

 そうでも無くて。まぁ性格も全然違うし。

 何ていうか、愛実も母に似ていて・・・母方の祖母にも良く似ています。」


随分遠回しに説明をしている。

今まで誰にも口に出して言わなかった事を話すのは厄介で、

とても大きな勇気が必要になる。


「私たちそれぞれ、自分の母に似たみたいで・・・」


次に何て言えば良いのか困っていると、滝氏は助け舟を出してくれた。


「愛実さんと美海さんは、お母さんが違うんだね」


秘密が、秘密ではなくなった時、もっと複雑な感情が起こると思って不安だった。

けど今私は、なんだかほっとした。

それは、滝氏がしっかりとそして前から知っていたかのように受け止めてくれたからだ。

言葉が、自然と出て来た。


「はい。私の母は私が一歳の時に亡くなって、

 その次の年に愛実の・・・今の母、好実さんと再婚して、その翌年愛実が産まれました。

 私の母は、洋海と言います。

 その事を知ったのは六歳の頃です。

 ある日父がお墓に連れて行ってくれて、お墓の前で話してくれました。

 私の実母は亡くなっていて、好実さんと血が繋がっていない事を。

 父が再婚してから、私は好実さんに育ててもらいました。

 愛実が産まれてからは愛実と一緒に。

 好実さんはとても良い人で、私たちを平等に扱ってくれました。

 ただ、まぁ、当然ですが、愛情には差がありました。

 本人は気付いていないと思いますが。

 例えば、私たち二人が同時に転ぶと、真っ先に愛実に手を伸ばします。

 まだ、子どもでしたし、私が姉だからかとも思っていましたが・・

 正月とかに、好実さんの実家にご挨拶に行ったりすると特に、

 好実さんの家族にしてみれば私は他人ですから。

 でも幼い頃は実の母だと思っていたので、そういう事を感じると、

 言いようの無い不安や寂しさがありました。

 大人は表面に出して無いつもりでも伝わって来るものがありました

 でも、好実さんと仲が悪い訳では無いんです。

 どちらかと言えば良好で、仲の良い親子だと思われています。

 愛実と好実さんは良くケンカしてます、お互い譲れない性格ですし。

 二人は良く似てます。

 私と好実さんは、譲り合うしかないいんです。

 私たちが家族であるために。

 多分父は、そんな私の気持ちを察してくれて、

 あの日、お墓の前で・・・

 話を聞いて、納得しました。いろんな事に。

 家事に目覚めたのはその頃からで、好実さんに迷惑をかけたく無かったし、

 それ以上に早く自立したかった。

 とにかく家の中に私の居場所は無いように思えたので。

 父の実家に良く預けられていました。祖父母は良くかわいがってくれました。

 特に祖母は料理や掃除片付け、

 知っておくと生活に困らない事をたくさん教えてくれました。

 祖母は何をするにも何を教えるにも楽しそうにしていたので、

 あの頃は気付かなかったけれど、今思うと、

 私の事を想って、必要な事を教えてくれていたのだと思います」


「美海さんの原点だね」


呟くように滝氏が言った。感心しているようだった。

そうですね。と返事をしながら、

あぁ、そうか。と心の中で新しい発見に納得する。

「原点」そんなことを今まで考えた事も無かった。

彼の言う通り、祖母の教えてくれた事の全てが今の私をつくるための、

まさに、原点だ、と。


「父方の祖父母は、私が大人になってから

 『あんたの事をもっと可愛がってあげたかったけど、

  あんたばかりを可愛がると好実さんに気が引けてね。

  二人とも同じように可愛がってたつもりだけど、

  あんたには愛実より寂しい思いをさせてしまったかもしれないね』

 と言われた事があります。

 私はその言葉をどう受け止めたら良いかわからなくて・・・

 なんだか、私の存在がみんなに窮屈な思いをさせているように感じて、

 おばぁちゃんたちには申し訳ない気持ちが先に立つようになっていたけど、

 そっか、そうじゃなくて・・・」


「うん、ありがとう。だね」


手に持ったグラスの、3分の1のアップルジュースから顔を上げて、

滝氏を見る。本当に不思議な人だ。


「・・・ありがとう。ですよね」


「うん」


本当に、不思議な人だ。



つづく。。。

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『MIMI』第20話・雲野詩子

MIMI  -ミミと美海と滝さんについて-


     第20話


「・・・ちがうんです」


悪いのは私で、謝らなくてはいけないのは父で、

話を聞いて欲しいのは、今目の前にいる人。思いを出してしまいたい。


だけど・・・


滝氏は下を向いた私の頭を一度やんわりと撫で、

その手で軽く背中を押した。


「美海さん、座ろうか」


そう言って私をソファーに座らせると、その隣に彼も座った。

少しの間をおいてから、滝氏は丁寧に言葉を繋いだ。


「今、大切なのはね。美海さん、あなたが話したいか、

 そうでは無いかということ。

 内容が話すべき事かどうかの必要性では無く、

 あなたが、隣にいる僕に話したいかどうか。じゃないかな?」


その彼らしい言い方が、胸の奥の方に沁みる。

鼻の奥がつんっとして止まりかけていた涙が、またあふれて来た。

先生だからなのか、私よりもずっと大人だからなのか

彼だから、なのか・・・


ただ黙って泣いている私の状態を、彼なりに受け止めてくれているのだろう。

きっと、私の心の動きを想定し、気持ち考慮して、

彼が今私に対して考えている事を正直に伝えてくれているのだと思う。

「話したいなら話して」と簡略化することもできたのに、そうはせずに。

話したい。きっと上手くは話せないけれど


「でも・・・」


彼にとって迷惑では無いだろうか。

そんな事を言うともう既に今迷惑をかけているのだけれど。


「でも、は何か言い分けや、否定の理由付けをする時に使う言葉だよ。

 その中にある、気持ちを押し殺すための納得のいく理由は、

 今要らないんじゃないかな。探してしまう気持ちはわかるけどね。

 話したいけど、でも。なら、気持ちは明確だよね」


「・・・はい。話したいです。滝さんに」


鼻をすすりながら素直にいった。


「うん」


頷いて彼は、幼い子どもにするように私の頭をよしよしと撫でた。


「ちょっと待ってて」


と言いながら風呂場に行き、タオルを持って来た。

タオルを私に渡した後、食器棚からグラスを二つ取り出して、

冷蔵庫からアップルジュースを出して来て、またソファーに戻って来た。


「はい。一口でも飲んで」


言われた通りにアップルジュースを一口飲む。

冷たくて、甘くて、優しかった。


「それで、どうしたの?」


タオルで顔を拭きながら滝氏に話し始めた。


「き、今日父から着信があって、私、気付かなくて、

 それで、電話待ってるってメールも来て、でもまだ連絡してなくて・・・

 じ、実はまだここで働いている事、話してなくて、

 前の仕事を辞めた事も・・・どう話していいかわからなくて」


話し始めたのは良いが、何をどこまでどう話したら良いのか考えあぐねる。

とにかく、一つだけお願いをしておかなくては。

まぁ滝さんのことだから、心配無いとも思うが・・・


「あの、愛実には、愛実や翔君は知らない事なんです。

 だから、あの、知られたく無い事なんです、だから・・・」


「わかった。だれにも話さないよ」


ほっとするはずの、彼の答えに、どくんっと心臓に緊張が走る。

秘密を打ち明ける準備を整えてしまった。


「お、おねがいします」


「うん」


つづく。。。

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