MIMI -ミミと美海と滝さんについて-
第39話
暗雲立ち込める。
と言うに相応しい空模様だ。
洗濯物を外に干したのだが、部屋干しにすべきだった模様。
風はあまり無い。
昨夜強い風が一晩中吹いていた。
きっとあの風が、この雨雲を連れて来たのだろう。
紅葉が終わり、庭に落ち葉が積もっている。
降り出す前に一度落ち葉を集めたい。
今日は日曜日なので滝氏は書斎にいる。
朝から起きて、お味噌汁を食べてすぐ書斎に籠った。
何やら忙しいらしい。
夕方から雨。
とテレビでお天気お姉さんが言っていたので、
落ち葉集めは午前中に済ませておこうと、
一階の駐車場の奥にある物置に熊手を取りに行った。
長靴を履いて、寒いので着古したPコートを着込んで、
軍手を装着。いざ、出陣。
門のあたりから始めて、書斎の前を、
書斎から母屋までの道を一気に進めて、
集めた枯れ葉を45ℓのゴミ袋に詰め込む。
2袋がパンパンになった。
これだけあれば焼き芋が出来るな。
土に埋めれば肥やしになるし。よしよし。
熊手を木に立てかけて、ゴミ袋を抱えて物置へ。
一時保管。
2袋を運び終えて、熊手の所まで戻って来ると、
門の前に人が立っている。
女の人だ。
見た事の無い人なので、
回覧板を持って来た近所の人では無さそうだ。
滝氏の知り合いだろうか?
ま、まさか彼女?!
そんなっ滝さん、こないだ夢の中で私に告っていたのに。
夢は夢か・・・あれは本心かどうか確かめてないから、
当てにならない。(確かめる勇気はない)
思わず、熊手を持ったまま近くの木の陰に隠れてしまった。
はっ!しまった!
これじゃぁまさに、家政婦はなんたら状態だ。
しかしなんとなく、
何の御用ですか、
と言って出て行くに行き辛い空気を醸し出している。
滝氏の知り合いであれば書斎にいる滝氏が対応してくれるハズ。
しばらく観察することにした。
滝邸の敷地の中に入る事に躊躇するように立っていたその女性は、
真っ直ぐに、滝氏のいる書斎の方を見ていた。
そしてインターホンを押す事無く、迷う事無く、
書斎の方へ歩いて行った。
あの足取りは初めて来た人では無い。
日曜日に滝氏が書斎に籠る事を知っている所からしてもそうだ。
上質なツィードのハーフコート、
その裾からはシャンタンのスカートが少し見える。
黒いタイツの先には黒の上品な革のブーティを履いている。
フリンジの付いたバッグのチャームにはブランド名らしきロゴ。
栗色のきれいな髪は毛先を程よく巻いていて、
お嬢様の見本のような美人だった。
滝姉妹も美人のお嬢様方だが、
咲枝さんはパリジェンヌだし、
香穂さんは主婦なのでだいぶ雰囲気が違う。
特に咲枝さんはファッション関係のお仕事なので個性的だ。
年頃は香穂さんよりは少し若いくらいだろうか?
多分私よりは上である。
お嬢様が、滝氏の書斎の戸をノックする。
戸が開いて滝氏が出て来た瞬間に
二人が抱き合ったりしたら、どうしよう。
もう逃げるしか無い。・・・どこへ?
とりあえず自分の部屋に。荷物をまとめて・・・
と、つまらない事をいくら考えていても、
滝氏は、出て来ない。
出て、来ない。
彼女がもう一度ノックする。
やはり、出て来ない。
気付いていないのだろうか?
滝氏が出ないと、私が対応しなくてはいけないという
気まずい事態になってしまうので、
出来れば出て来て欲しい。
が、なかなか出て来ない。
彼女がまた、ノックする。
そして今度はドアに向かって何か言った。
私の隠れている楓の木からは、
遠過ぎて、何か言ってるな。くらいにしか聞こえない。
しかし、滝氏は出て来ない。
~つづく~
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