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うたたね♪日記

元・絵本カフェ詩多音オーナーのブログです。 現在は、絵本をつなぐ活動の  心 色~ココカラ~ メンバーとして活躍中!!!

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『MIMI』第28話・雲野詩子

MIMI  -ミミと美海と滝さんについて-

      第28話


「みぃみぃ~おやつない?」


と言ってキッチンに入って来たのは香穂さんだ。

今日は滝氏への『業務報告の日』で、朝食の時から来ていた。

業務報告自体は滝氏の書斎でするのだが、

いつも飲み物や食べ物を求めて、わざわざ母屋までやって来る。


毎月一回は必ず来ているのだが、

こうして母屋まで足を運ぶようになったのは、ここ半年くらいの事だ。

それまでは私に遠慮していたらしく、

書斎に来て、母屋に寄らずに帰って行っていたそうだ。

私は来ている事さえ知らなかった。


ある日

「ご挨拶が遅くなってごめんなさい。兄(滝氏)が、

 日曜日は町田さんは一応お休みの日だと言っていたので・・・

 どうかしらと思って・・・」


と、初対面の時に言っていたが、

気付いたらなんだか友人のように親しくなった今になって、

分かったのは、香穂さんはタダの人見知りだ。

そして末っ子だからか、甘えるのが上手い。よく愛実みたいだと思う。

香穂さんの方が私より年上なのだが。

とに、かく、今となっては朝ご飯に間に合うように来て、

夕食まで食べて帰って行く。

そして最近はもう、書斎にいる時間よりもこっちに居る時間の方が長い。

どころか、書斎に一瞬顔をだして、あとはずうっと母屋にいる時もある。

もちろん、来る前にメールが届く。


「今月は20日の日曜日に行くから、美海絶対に家に居てね」


と言った具合に。

毎回必ず日曜日なのは、滝氏の学校の休みが日曜日だからだ。

何の業務報告かというと、

滝氏のご両親の持っていたアパートの経営についてだそうだ。



香穂さんは結婚していて子どももいる。

女の子が二人。小学6年生と2年生。

フルネームは、丹羽香穂子さん。

旦那様は小さな不動産会社を経営している。

旦那様のお父様が開業し、二代目としてがんばっているそうな。

滝家のアパートはオーナーは滝氏らしいが、

管理、運営は香穂さんの旦那様、丹羽氏の不動産会社に任せている。
(全て香穂さんからの情報で詳しい事は分からない)

で、業務報告には、忙しい旦那様や数少ない従業員の代わりに、

香穂さんが一人でやって来るらしい。

香穂さんは元税理士で、

今は旦那様の会社で会計経理全般を担っているそうだ。

ちなみに、私はその会社の社員として働いている事になっている。

滝家の財産管理は香穂さんの仕事で、

私のお給料も香穂さんが私の銀行口座に振り込んでくれる。

なのでもちろん、通帳には丹羽不動産の名前が記帳される。

とはいえ、本当は一ヶ月に一回来る必要も無く、

メールや電話で済む事も多いようなのだが。

子どもも旦那様も置いて出かける(実家に寛ぎにくる)事が、

彼女にとって楽しみの一つのようで、

用が無くても月に一回必ずやって来る。



滝家の兄弟はとても仲が良い。

香穂さんはよく


「ウチは三姉妹だからバランスが良いの」と言う。


初めて聞いたときは驚いた。
(滝さん実は女?ま、まさか、お姉?イヤイヤ・・・)

けれど、なんとなく頷ける。

そのくらい仲が良いという事のようだ。

それに、滝氏は男々していないというか、男らしくな・・・

否、やわらかくてやさしい雰囲気だ。よしっ。


「美海~ねぇねぇ、漣ちゃんにもさぁ、何かおやつある?

 私持って行ってあげるよ」


香穂さんは滝氏の事を『漣ちゃん』と呼ぶ。


「今日はヨーグルトがありますよ。器に盛りますね。

 少し待っていて下さい」


「うん、待ってる」


ガラスの器にヨーグルトを、その上にブルーベリージャムをのせる。

2つ用意して、スプーンも2つ一緒にお盆にのせた。


「美海ぃ、美海の分は?」


「私は今から夕食の準備をしますから。

 おやつはお二人でどうぞ。

 香穂さんも食べて帰られるでしょう?」


「もちろん。じゃぁ仕方ないから漣ちゃんと二人で食べるね」


「あ、待って、お茶はいい?まだ向こうにありますか?」


「あるある大丈夫。ありがと、美海。あ、ねぇクッキーない?」


「ありますよ」


クッキーとヨーグルトを持って、香穂さんは楽しそうに書斎に行った。



香穂さんは、何か手伝おうとかいう気持ちは更々無い。

作ってもらう、やってもらうのが好きな人だ。

私としては人に指図したり頼んだりするのが不得手なので、

とても助かる。

「何か手伝おうか」なんて言われると、私は困る。

断るにも、どう断れば失礼が無いか悩むし、

手伝ってもらうのはありがたい事なんだけれど、

自分のペースが崩れるので・・・困る。



携帯が鳴った。愛美かなと思って出たら、滝氏だった。


「今から翔太君と愛実ちゃんが赤ちゃんを連れてくるみたい。

 今電話があってね。

 香穂も夕食を一緒に食べてから帰りたいって言ってるけど、

 大丈夫かな?大変なら、香穂は帰すけど」


えーやだー赤ちゃん抱っこしたいしー

と香穂さんの声が電話の奥から聞こえる。


「はぁ、となると五人とイチ赤ちゃんですね。

 賑やかな夕食になりますね」


「ごめんね、お願いできる?」


「大したものは作れませんが、おなじみの物をたくさん作りますね」


「ありがとう。よろしくね」


電話を切ってため息を一つ。

ふうー。

よりに寄ってなぜ今日やって来るのだ、我が妹よ。

来週でも良いじゃないか。

と後で言ってやろうと決めて、料理に取りかかった。




つづく。。。


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