MIMI -ミミと美海と滝さんについて-
第18話
「あなた、香川さん。帰ってたんだね、久しぶり」
「はい!無事、カナダから帰国しました!
報告が遅くなってすみません。
四月から大学に入学したんですけど、
滝先生にはなかなか会えなくって。
紹介していただいたホストファミリーの方々にも本当に良くしても
らって!
滝先生のおかげです!本当にありがとうございました!!」
どうやら留学していた滝氏の教え子のようだ。
「楽しかった?」
「はい!もうっ今すぐ戻りたいくらいです!」
「それはよかった。ローレン夫妻は元気だった?」
「はい、とっても!いろんな所に連れて行ってもらいました。
また会いに行きたいです」
「僕も久々に会いたいな。そういえばこの大学に通ってるの?
もし良かったらまた僕の講義も聞きに来てね。
まぁあまり重要な講義ではないから無理にとは言えないけど」
「いやいやいやいや!先生の講義めちゃくちゃ人気なんですよ!
なかなか席が取れなくて」
「そうなの?」
「そうなのって自分の事なのに!滝先生相変わらずですねぇ」
「そうかな?」
「そうですよ。
私だって先生の講義に行けば帰国の報告もできるし、
と思って何度も予約入れようとしたんですけど受付開始10分で満
席で、
なっかなか取れないんですよ!
先週やっと来月の第一週の土曜のが取れたんですけど、
30分前からパソコン開いて受付開始に備えて、やっとですよ!
大体、人気ある割に席が少ないのが問題だと思います。
もっと大きな講堂にしたらいいのに!
高校時代には当たり前のようにほぼ毎日受けてた滝先生の授業が、
大学に行くとこんな事になってるなんて、びっくりです!」
活き活きと、表情豊かに身振り手振りを付けて話す女の子で、
とても可愛らしかった。
滝氏の事をとても信頼し慕っているのが良くうかがえた。
滝さん本当に先生なんだなぁ。
としみじみ思う。しかも人気講師。
バレンタインの時のチョコの山を思い出した。
・・・いろんな意味で人気なんだな・・・
「
先生にお土産があったんですけど今日会えると思ってなかったから
、
持って来てなくて。来月の講義の時に持って行きますね!」
「ありがとう」
「私これからバイトなんで、引き止めてすみませんでした。
では、また!」
そう言って滝氏に手を振って、私を見て軽く会釈をして、
慌ただしく走って行った。
私は会釈をされた事に驚いて慌てて一礼を返した。
滝氏は軽く手を振り、回れ右をすると「行こうか」
と私に目で合図する。
一緒に駐車場に向かって歩き出す。
「彼女は香川立花(かがわりつか)さん。
一昨年まで高等部の方にいて、
三年間美術部で、三年生の時は副部長をしていたんだよ。
留学しようか迷っている時に僕に相談に来てね。
僕は英語の教員で、副顧問だったから」
「・・・副顧問?美術部のですか?」
「そうだよ。言ってなかったかな?」
「初めて聞きました」
聞いてないよ!
知らなかった。美術部の副顧問だなんて。
バスケ部とかサッカー部と言われるよりは、頷けるが。
美術部、副顧問。
まぁ顧問ではなく副顧問はいれば良いくらいのもので、
専門知識は必要無いんだろう。きっと。多分。
「元気になって帰って来てくれて良かった」
ん?何か話の大事な所をすっ飛ばしているな?
滝氏は時々こういう気にかかる言い方をする。
つっこんで聞いてみて良いものか・・・今日は聞いてみよう。
「元気に『なって』ですか?」
「うん、カナダに行く事になるまで色々あってね、
出発前半年間くらいずっと元気無かったんだよね」
ほうほう、それでね。「いろいろ」は聞かない事にしよう。
もう、プーさんまで10mくらいの所まで来ているし。
かの彼女のプライベートな事だろうから。
「へー。・・・それでは滝さん私はここで」
「うん、ありがとね。気を付けて」
「はい」
ずぅぅぅと後になって知る事になるのだが、
この日をきっかけにこの学校では、
私は滝氏の奥さんであるという噂が出回ったらしい。
ただ散歩した事だけが原因では無く
「一緒にいた人は誰?」
との学生方の質問に
「家の者」
と答えたためだそうだ。
間違ってはいないが・・・
つづく。。。
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