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うたたね♪日記

元・絵本カフェ詩多音オーナーのブログです。 現在は、絵本をつなぐ活動の  心 色~ココカラ~ メンバーとして活躍中!!!

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『MIMI』第12話・雲野詩子 ②


MIMI   -ミミと美海と滝さんについて-

 第12話 ②




滝氏が軽くかおるさんと私の紹介をすると、
彼女は私に丁寧に頭を下げた。

「白川かおるでございます。本日はお招き下さって・・・」


「いえいえ、そんなこちらこそ今日は遠い所を・・・」

なんていう社交辞令な挨拶のやり取りを滝氏は早々と打ち切って、


かおるさんをソファーに座らせた。

「二人ともそんなに気を使わなくて良いよ。さ、かおるさんはここに座って。


 美海さんお茶をお願いね」

「いえ、そんな、何かお手伝い致しますわ」

「いいえ、今日は全部美海さんにお願いしています。


 かおるさんは今日はお客様ですから座っていてくださいね」

「あら、そう?それなら漣太朗さんの言葉に甘えましょうね。


 ああ、美海さんお茶まで出してくださってありがとう。


 それにしても、とってもすてきなお部屋になったわね!


 まさか、漣太朗さんあなたが?」

「ええ、そのまさかです。・・・と言いたい所ですが、美海さんの仕事です。」


おおっと、一瞬私の手柄を横取りする気かと思った。

「そうよね。漣太朗さんのはず無いわね。去年来た時と同じ部屋には思え無い。


 お洒落でいて嫌味がなくて・・・とても優しい。」

まぁぁぁぁぁ!かおるさんが私を褒めてくれたぁ!嬉しい!

「うん、インテリアの事はよく判らないけどすごく居心地が良いよ」


「あら、漣太朗さんはよく判らないのではなくて興味が無いのでしょう。」

「ははっそうかな?」

「まぁ、このお部屋に居心地が良いと思えただけ漣太朗さんにしては上出来ね」

かおるさんはハキハキとしっかり話す。


70過ぎの老婦人とはとても思えない若々しい方だ。


私よりも少し背が高く、骨格のしっかりした健康そうな体軀にショートカット。


真珠のピアス、品の良いベージュのワンピースに、


若草色の春物のノーカラーのジャケットをさらりと羽織っている。


良い意味で私の予想は裏切られた。


なんて素敵な女性だろう。と一目見て思った。


もちろん、目尻や首のシワやシミ、口元のホウレイ線もしっかりあるし、


髪の根元に白髪ものぞいている。


彼女が70年以上の歳月を重ねて来た証はしっかりと刻まれているのだが、


背筋をまっすぐに安定感のある歩き方をする姿は、本当に美しい女性だという印象を受けた。


私のイメージしていたかおるさんは小柄で和服の似合うような、


かわいらしいおばぁちゃんだったので(滝氏も以前かわいいと言っていたと思う。)


イメージとのギャップにかなり驚いた。


けれどイメージのかおるさんよりも本物のかおるさんの方がずっと好きだ。


なんて事を思いながら、何も聞いてませんと素知らぬ顔で料理の続きをしていると

「僕はなにをしたらいいの?」

と言いながら滝氏が寄って来た。


何もありません。と冷たく追い払う訳にもいかないので、


木製の鍋敷きを彼に渡した。


「では、これをテラスのテーブルに。テーブルは用意しています、料理にかけているラップや、


 食器にかけてる布を外していただけると・・・


 あとは昨日滝さんの買って帰った日本酒を、あ、冷蔵庫に冷やしてます。


 持って行って、かおるさんにテラスの方に移動してもらってください。」


「わかった。コレは何に使うの?」

なんと言う事でしょう!どうやら渡された木の板が何かわかっていないらしい。

今焼いているグラタンが焼き上がったら皿ごとその上に乗せます。


 なので空いてる所に置いてください。


 あ、お酒を注ぐの何か冷酒グラスとかもおねがいします」

「うん。他には?」

「・・・えーあと五分ほどで焼き上がるのでこれを持って私も席に着きますから、


 二人で先に始めていてください・・・滝さん。五分くらい待つのにって顔をされてますが、


 かおるさんをお待たせしない事の方が大事だと思います。


 気を遣って始めておいてくれませんか?」

「そうだね、わかった。始めておくね」

笑顔で返事をするとかおるさんと共にテラスの方へ出て行った。

「まぁこんなに。どれもおいしそうね私の好きなものばかり!」


「美海さんの料理は美味しいですよ」


鍋を洗いながら、テラスの方から聞こえてくる二人の会話を聞いて、思わず顔がゆるむ。


ボウルを濯いでいるとオーブンが鳴った。


グラタンの完成だ。


鍋掴みを手にはめてオーブンを開けるとチーズを焦がした香ばしい匂いが食欲をそそる。


焼きたてのグラタンを手にいざ、テラスへ。


~つづく~

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