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うたたね♪日記

元・絵本カフェ詩多音オーナーのブログです。 現在は、絵本をつなぐ活動の  心 色~ココカラ~ メンバーとして活躍中!!!

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出版しました。

うたたね日記で連載をしていました。

雲野詩子さんの『MIMI』が小説として出版されました。

『One day someday』
是非は、小説でお楽しみ下さい。






Amazonで購入できます。

One day someday https://www.amazon.co.jp/dp/4864768625/ref=cm_sw_r_cp_api_i_R0RX8ZJCCRGC9JDQ4CM0

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『MIMI』第41話・雲野詩子

MIMI   -ミミと美海と滝さんについて-


      第41話



イライラする。

私の中の、なんだか『柵』の様なものが

ガタンッと音を立てて外れる。

その中にいた、黒いものがゆっくりと流れ出る。

首を傾げるように左右に頭を振って


「あぁ、そう」


と声が出た。

彼女がこちらを振り返る。


「何か?」


もう、睨まれたって怖くない。そんなの知らない。

一言、文句を。


「ええ、ああそうだ。ジコチューって言うんだ。

 あなたみたいな人。

 自己中心的とか自分勝手とか?

 ふっ、良いと思います。


 人の事考えずに自分の思うように行動できるのは。

 本人にとってはとても良い人生だと思います。

 で?私はきれいで、本当は優しい心を持っていて、

 いつもこんなに一生懸命に頑張ってるの。

 わざとじゃないのよ。

 だから私はわるくないでしょ?って?

 はは、10代20代の未熟さ故の無知で純粋な過ちなら

 『若気の至り』と恥ずかしかった過去の思い出にもなるでしょうが、

 あなたの場合、ずっとそのままでしょうね。

 というより、是非その生き方を変えないで欲しいと思います。

 私には決してマネ出来ない生き方ですから」


一言のはずが、たくさん出て来てしまった。


「あなたっっ・・・何なの!?意味が分からないっ・・・」


激怒するかと思っていたのに、意外にも狼狽え戸惑っている。

それでも言い返すあたりさすがだ。


「・・・いや、失礼。分かっていただかなくて結構です。

 たっ、いや、れんたろさん大変申し訳ありませんでした。

 つい心の声が出てしまって。

 どうぞ話しの続きを。黙って立ってますから」


??

滝氏が下を向いている。

怒ったのだろうか?

私の彼女に対する失礼な言葉に。


「あの・・・」


すみませんと言いかけて、やめた。

滝氏が、お腹を抱えた。怒っているのではない。

笑っている。爆笑だ。


「はははははっはははっはっ・・・くるしっ」


彼の笑い声にこっちを睨んでいた曵汐さんも彼の方を見る。


「笑っている場合ではありませんよっ!

 ほらっちゃんと立って、深呼吸して下さい」


全く、どんな笑いのツボしてるんだこの人は。

笑える所なんてひとつも無かったのに。


曳汐さんが

より怒ってしまうのではないかと心配したが、

彼女は何も言わない。

滝氏の方を向いてしまった彼女がどんな顔で、

どんな気持ちで彼を見ているのか、

私には分からなかった。


「はあ、おかしいね。ほんとに。

 曳汐さん、僕はあの時の事を恨んだり怒ったりしてないよ。

 許すも何も、あなたがあなたの人生を思うように生きた。

 その結果でしかない。

 許して欲しいと言うなら、もう、ずっと前から

 あなたは許されているんだよ。

 僕の事はもう気にしないで。

 昔の事を思い出してる暇はお互いないんじゃないかな?

 僕には無いんだ。

 もう、僕の心の中にはこの人しかいないから」


えぇっ私ですか!?いや、ちがうちがう。

今私滝さんの奥さんの設定だった。

びっくりした。

思わずときめいて、顔が赤くなってしまった。


「・・・そうね」


「元気でね」


「えぇ、漣太朗も」


彼女は滝氏に背を向けた。

こちらを振り返った彼女は涙ぐんでいた。

少し可哀想に見えた。

しかしそれよりも、

ホッとしたような晴れやかな案著を感じているように思えた。

そう思ったのはきっと、

滝氏が彼女の背中を笑って見送っていたからだ。

彼女は振り返らず、私を横目で見て、通り過ぎた。

その目には敵意も怒りも戸惑いも感じられなかった。




「ごめんね美海さん。変な事に巻き込んでしまって」


彼女が見えなくなると滝氏はそっと言った。


「ええ、なんか、すごい巻き込み事故・・・」


おおっと


「いえ、こちらこそすみません失礼な事を言ってしまって」


しまったポロッと本音が先に出てしまった。

滝氏が笑う。いつもの笑い方だった。


「はは、本当にすごい巻き込み事故だったね」


いやいや、巻き込んだのはあなたですよ!


「まぁ私が自分で突入したんですけどね」不本意ながら。

あぁいう時は親切心を働かせてはいけない。

やはり逃げるべきだったと後悔する。


「うん」


思い出したように滝氏が笑う。


「うんって、滝さんが出て来ないから!」


「はは、そうだったね。ごめんね」


全く。

そう言えば滝氏は薄着のままだ。

早く中に入ってもらわないと。


「美海さん、さっきの・・・」


「それより、中に入りましょう滝さん。

 そんな薄着で長く外に出てたらまた風邪引きます」


「・・・うん」


ん?何か今大切な事を言いそうな雰囲気だったのに、

思いっきり打ち切ってしまった。

でもとにかく滝氏を中に押し込んで、

体を温めてもらおうとお茶を淹れた。


「はい。お茶でも飲んで温まって下さい」


「ありがとう」


湯呑みを受け取る滝氏に聞いた。


「そう言えば、何か言いかけてませんでした?」


「うん」


少し考えてから滝氏は言葉を繋ぐ。


「さっき言った事なんだけど」


「はい、どれでしょう?」


「僕が美海さんに・・・」


その時、ザッと地面に雨の打つ音がして

私は慌てて窓の外を見る。


「あっ!雨!すみません滝さん洗濯物がっ!

 先に取り込んできます。また食事の時にでも話しましょう」


「そうだね、またね」


なんて、タイミングの悪い雨なんだ。

きっと「また食事の時」には聞けないように思われる。

昼から雨とは聞いていたけど、今じゃなくても良いじゃないか。

と思いながら書斎から母屋まで走る。

途中、木に立てかけっぱなしていた熊手を拾って。



~つづく~


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『MIMI』第40話・雲野詩子

MIMI   -ミミと美海と滝さんについて-


       第40話



滝氏は出て来ない。

寝ているのだろうか?・・・考えにくい。

とても嫌だが伝言でも受けた方が良いかもしれない。

そう思って彼女に近づいて声をかけてみる事にした。

緊張する。



「あの、滝に何か御用でしょうか?

 呼んで来た方がよろしいでしょうか?

 伝言でよろしければ、私が承りますが。」


後ろから声をかけられて、大変驚いたようすで彼女は振り返った。

一瞬、目が大きく見開かれたが、

すぐに元の顔に戻り、私を上から下まで見定めて、

冷たい声で言った。



「あなた誰?漣太朗のなに?」



冷たい声にびびり、

滝氏を呼び捨てにした事に、戸惑い、萎縮する。



「・・・えっっと、あの、私は・・・」



家政婦の町田ですと、言おうとした時、

書斎の戸が開いた。

滝氏だ。

彼女が素早く向き直す。

あ、出て来た。じゃ、もういいや、私は逃げよう。

と横を向くと、驚くべき事を言う滝氏の声が聞こえた。


「その人は僕の妻で美海。久しぶりだね曵汐さん。

 美海、こちら前の職場で一緒だった曵汐さん。

 ごあいさつして?」



「!!!」



驚き過ぎて口が大きく広がって、あごが外れるかと思ったが、

彼女がこちらに振り返ろうとしたので慌てて口を閉じた。

むぅ・・・仕方ない。話しを合わせるか。



「あー、えと、こんにちわ曵汐さん。

 滝、美海と申します」


「奥さん。そう、あなたが、今、の漣太朗の妻なのね」



彼女は「今」を強調した。

何だろう?何も失礼な事は言われてないはずなのに、

とっても嫌な気持ちになった。



「私は、曵汐里華子。彼の最初の妻よ」



「!!!」


おおおおお!そう来たか!

それは想定外だった。

それで滝氏は・・・色々複雑な想いが廻ったのだろう。

だからって、巻き込まないで下さい(泣)



しかし元妻曳汐さんは何をしにやって来たのだろうか?

明らかに滝氏に嫌がられている(滝氏にしては珍しく)


「・・・・そうですか?」


なぜか疑問詞で答えてしまった。


「ええ、そうよ」


そう言った、目が、目がコワイ。

これは修羅場ってヤツか?

そうだ、きっと私は今、修羅場にいる!

逃げたい。


「はぁ、ではあの、お茶でも淹れましょうか?

 ね、寒いのでお話でしたら中で・・・」


滝氏の目がとても静かに「NO」と言っている。


「ありがとう美海、でもその必要は無いよ。

 長居するほどの用では無いはずだから」


いつもより少し低く聞こえる滝氏の声。

こちらを向いたままの曳汐さんがすごい目で睨んでる。

目線が痛い。

滝さんお願いだから彼女を中に入れて、私を解放して下さい。

と目で訴えてみたが、無理そうだ。

多分一番困っているのは滝氏本人なのだ。

今私が居なくなったら本当に困る。

と思っているのが全身から伝わって来る。


「ええ、お茶は結構よ。ありがとう美海さん」


彼女は何も失礼な事は言っていないのだが、

とても軽蔑された気分だ。

毒の塗られた針を刺されたような、

小さな痛みと共に鈍い嫌悪感が広がる。


「・・・・・・・」


あなたに名前を呼ばれたくありません。

口から出そうになったのをぐっと堪えて、

下を向いた。

一歩、曳汐さんは滝氏の方へ歩み寄る。


「突然、押し掛けてごめんなさい。

 電話には出てくれないと思って。

 それに会って話したくて・・・」


ん?なんだなんだ?

要はよりを戻したいという話しをしにきたのか?

で、新しい妻(私)が居たからその妻に敵意を露にし、

どこをどう見ても、自分が勝てると算段して、

話しを持ちかけている・・・?

まぁ、ボロボロのPコートに軍手に長靴で、

見るからに埃っぽくて汚い私に負けたと思う人はまず居ないか。



それはそうとして、滝氏が薄着なのが気になる。

どうして、上着を着て出て来なかったのか。

また風邪でもひかれたら私が困る。

私には関係の無い話しになりそうなので、

上着を取りに母屋に戻ろうか?

でもさっきから滝氏が、私を見張っている。

彼女が話しているんだからそっちを向いとけば良いのに。

目を離したら逃げると思ってか(もちろん逃げますが)

じっとこっちを見ている。・・・困った。


「悪かったと思ってるの、漣太朗を支えられなかったこと。

 逃げるように出て行ってしまった事。

 あなたに、謝りたくて。

 あの頃、仕事も大変で自分の事で精一杯になっていて」


だんだん弱々しい声になってきた。


「漣太朗はいつも仕事ばかりで、

 何も、話してくれなくて・・・

 私、寂しかったの。

 漣太朗には私なんて必要無いんじゃないかと思って」



・・・で?だから何なんですか?

と、私としては言いたい。

何を言ったって彼を置いて行った事に変わりは無い。

滝氏は黙っている。どうして何も言わないんだろう?

もしかしてこのお嬢様の言う事に耳をかしているのだろうか。

一度は愛して、結婚までした相手なのだ、

やはり戻って来てくれた事が嫌では無いのかもしれない。

その上、本当はあなたが一番みたいな事を言い出したら・・・

出て行くのは、私か。

急に、胸がザワザワと騒ぎ出す。



私は、この人が嫌い。


どうせ、出て行くなら私が我慢する必要は無い。


「ずっと気に病んでた。

 あのとき本当は追いかけて来て欲しかったの、

 必要として欲しかった・・・

 だけど、それは私の我が儘だった。

 後になって気付いたの。

 本当にごめんなさい。

 ずっと謝りたくて、ちゃんと会って謝りたくて」


ーあぁ、イライラする。





~つづく~

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『MIMI』第39話・雲野詩子

MIMI   -ミミと美海と滝さんについて-


       第39話



暗雲立ち込める。

と言うに相応しい空模様だ。

洗濯物を外に干したのだが、部屋干しにすべきだった模様。

風はあまり無い。

昨夜強い風が一晩中吹いていた。

きっとあの風が、この雨雲を連れて来たのだろう。

紅葉が終わり、庭に落ち葉が積もっている。

降り出す前に一度落ち葉を集めたい。

今日は日曜日なので滝氏は書斎にいる。

朝から起きて、お味噌汁を食べてすぐ書斎に籠った。

何やら忙しいらしい。

夕方から雨。

とテレビでお天気お姉さんが言っていたので、

落ち葉集めは午前中に済ませておこうと、

一階の駐車場の奥にある物置に熊手を取りに行った。

長靴を履いて、寒いので着古したPコートを着込んで、

軍手を装着。いざ、出陣。



門のあたりから始めて、書斎の前を、

書斎から母屋までの道を一気に進めて、

集めた枯れ葉を45ℓのゴミ袋に詰め込む。

2袋がパンパンになった。

これだけあれば焼き芋が出来るな。

土に埋めれば肥やしになるし。よしよし。

熊手を木に立てかけて、ゴミ袋を抱えて物置へ。

一時保管。



2袋を運び終えて、熊手の所まで戻って来ると、

門の前に人が立っている。


女の人だ。

見た事の無い人なので、

回覧板を持って来た近所の人では無さそうだ。

滝氏の知り合いだろうか?

ま、まさか彼女?!

そんなっ滝さん、こないだ夢の中で私に告っていたのに。

夢は夢か・・・あれは本心かどうか確かめてないから、

当てにならない。(確かめる勇気はない)

思わず、熊手を持ったまま近くの木の陰に隠れてしまった。

はっ!しまった!

これじゃぁまさに、家政婦はなんたら状態だ。

しかしなんとなく、

何の御用ですか、と言って出て行くに行き辛い空気を醸し出している。

滝氏の知り合いであれば書斎にいる滝氏が対応してくれるハズ。

しばらく観察することにした。

滝邸の敷地の中に入る事に躊躇するように立っていたその女性は、

真っ直ぐに、滝氏のいる書斎の方を見ていた。

そしてインターホンを押す事無く、迷う事無く、

書斎の方へ歩いて行った。

あの足取りは初めて来た人では無い。

日曜日に滝氏が書斎に籠る事を知っている所からしてもそうだ。

上質なツィードのハーフコート、

その裾からはシャンタンのスカートが少し見える。

黒いタイツの先には黒の上品な革のブーティを履いている。

フリンジの付いたバッグのチャームにはブランド名らしきロゴ。

栗色のきれいな髪は毛先を程よく巻いていて、

お嬢様の見本のような美人だった。

滝姉妹も美人のお嬢様方だが、

咲枝さんはパリジェンヌだし、

香穂さんは主婦なのでだいぶ雰囲気が違う。

特に咲枝さんはファッション関係のお仕事なので個性的だ。

年頃は香穂さんよりは少し若いくらいだろうか?

多分私よりは上である。

お嬢様が、滝氏の書斎の戸をノックする。

戸が開いて滝氏が出て来た瞬間に

二人が抱き合ったりしたら、どうしよう。

もう逃げるしか無い。・・・どこへ?

とりあえず自分の部屋に。荷物をまとめて・・・

と、つまらない事をいくら考えていても、

滝氏は、出て来ない。

出て、来ない。

彼女がもう一度ノックする。

やはり、出て来ない。

気付いていないのだろうか?

滝氏が出ないと、私が対応しなくてはいけないという

気まずい事態になってしまうので、

出来れば出て来て欲しい。

が、なかなか出て来ない。

彼女がまた、ノックする。

そして今度はドアに向かって何か言った。

私の隠れている楓の木からは、

遠過ぎて、何か言ってるな。くらいにしか聞こえない。

しかし、滝氏は出て来ない。




~つづく~





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『MIMI』第38話・雲野詩子

MIMI   -ミミと美海と滝さんについて-


     第38話



・・・え?

一瞬、バランスを崩したので、

彼の汗に手が滑ってしまったのかと思ったのだけれど、

ちがったらしい。

意図的に彼が私の体をベッドの方に動かしたようだ。


ええ!?


大変驚いた。

この、青白い(もやしな)彼に私の体を動かす力があるなんて!
(もっと他に思う事があるはずなのに)

やっぱり男の人なんだなぁと感心してしまった。

いや、しかしさっきまで押しても引っ張っても動かなかったくせに、

そんな元気があるなら着替えくらい自分でして欲しいと、

滝氏を睨みつける。

同時に、彼の手が私の頬に触れる。


「わかってるよ」


そのかすれた声が聞こえた時には、

私の視界から天井が消えて彼しか見えなくなった。

彼の唇が自分の唇に重なった時に初めて、

今、何が起こっているのか理解した。

まずい。

けど、あらがえない。

想像よりもずっと柔らかい彼の唇に

心臓が暴走しはじめた。

いたずらするように鼻と鼻をこすり合わせて


「美海さん、美海、かわいいね」


!!!!!

っっっぐはぁぁぁーー!

恥ずかし過ぎて全身が熱くなる。

それでなくても熱のある滝氏が乗っかっていて熱いのに。

彼の熱が私の舌にからみつく。

体の奥から、全身情熱に満たされる。

彼の背中に手をまわす。

右手で、彼の背骨を撫でる。

答えるように口づけは深くなる。



長い長いキスの後に

彼は耳元で呟く。


「美海、好きだよ」


かすれているのに

溺れてしまいそうなほどに艶めいた声で。

そして彼は、私の頬に耳にキスをして、

首筋に唇を押し付けたまま、

力尽きた。



彼の全身から力が抜けた瞬間、胸が潰されるかと思った。

重たい。


「ええっ!」


思わず声が出た。

これは一体どういう事だ。

彼の背中をつねってみた(強めに)

反応がない。

・・・

どうやら夢の中に戻って行ったようだ。

いや、待てよ?「これは夢かな」と呟いたのを思い出した。

まさか、全部夢だと思っての所行だったのか?

ありうる。

通常の彼には決して無い言動だ。

だって「好きだよ」ってもう告白だし!

ていうかどんな夢見てるんだ。

脱がされる前で良かった・・・いやいや!

ちがうちがう!

凄いキスされたし、私も何喜んじゃってんだ・・・

あぁ、自分が恥ずかしい。

いやでも、仕方ないよ。

好きな人にあんなキスされたら嬉し・・・いやいやいや!

ああ、どうしよう明日からいつも通りに出来るかな?

滝氏の出方次第か・・・?

ていうか本当に夢の中の事だと思っているのか?

いやーっどうしよう。

今まで無かったからまさかこんな展開が来るとは・・・

二年近く何も無かったのに・・・

やっぱりちゃんと男の人なんだなぁ滝さん・・・

・・・・・

パニック状態で頭の中がまとまらない。



まずすべきは滝氏の下から抜け出す事だと、

後から考えると思うのだが、

その時はその出来事に動揺し過ぎて、

彼に押し潰されたままくだらない事を考えて、

しかも疲れてそのまま寝てしまった。



夜中にザーッと風で雨が窓に叩き付けられる音で目が覚めた。

起き上がろうとして滝氏に潰されている事を思い出す。

安定した寝息が聞こえる。

熱も落ち着いたようだ。


「滝さん、どいてください」


もちろん返事は無い。

彼が起きてしまうのを覚悟で体を力一杯押し上げ、

なんとか這い出ることができた。

すごく喉が渇いていたのでサイドテーブルのポカリを飲んだ。

3分の2くらい飲んで、

しまったこれは滝さんのポカリだったと、

慌ててキャップをしてもとに戻す。

んー・・・とか言いながら何度か咳をして彼は寝返りをうつ。

どきっとして慌てて部屋を出た。

落ち着こうと思ってお風呂に入ったら、逆に目が覚めてしまって、

結局その日は悶々として眠れない夜を過ごした。




次の日、普通に起きて来た滝氏は、スーツでも寝間着でもなく、

デニムのシャツにカーディガン、コーデュロイのボトムというなんとも

秋らしい私服姿だった。

私が起きて来る前にシャワーも浴びたようだった。


「おはよう美海さん、随分良くなったよ。おかげさまで、ありがとう。

 今日は病院に行って来るね。

 一応インフルエンザじゃないか確認して、明日からは出勤するよ」


本当に、本当に何も無かったように普通の顔で普通に話して

普通にお味噌汁を飲んで、出かけて行った。



やはり彼は夢の中の事だとおもっているのか。

もしかしたらそんな夢を見た事すら忘れているのか・・・

聞くに聞けず、結局私も何も無かったようにしておくことにした。

けれどどうしても悔しいので、

いつかどこかでこの借りは返してもらうぞ。

と、心の中で強く念じておいた





~つづく~


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